2004.8.23.新規
2005.9.3.更新
中将棋をはじめとする古典将棋についての資料ですが、現在入手しやすいものとは言えず、かなりの規模の図書館や国立図書館などに古文書類として保管されている場合がほとんどです。また、中将棋の専門書と、それ以外の駒図が記された書物とに大きく区分されています。だいたいは江戸時代の文献ですのでその当時に指されていた中将棋以外は、まず当時の時点で記録が残されていなかったためではないかなと思われます。
ここではそれらの文献を紹介するとともに、現在一般に入手できる書籍の紹介も併せて行います。<未見・未所有>は会長が未見・所有していないものを指します。
なお、「将棋」の文字は文献によって、「象戯・象棋・将棊」と書かれていますが全て同じものです。
「中象戯圖式(ちゅうしょうぎずしき)」寛文3年(1663)−延宝3年(1675)
…中将棋の詰め物。後の「中象戯作物」の原本とされている。<未見>
「中象戯作物 圖五十(ちゅうしょうぎつくりもの ず50)・詰之次第記 中象戯作物 圖五十(つめのしだいき)」寛文3年(1663)
…問題編と解答編の2冊からなる詰め問題集、全50問。中象戯圖式と同じ年に出版されているが、同一内容であるかは不明。
「中象戯作物(ちゅうしょうぎつくりもの)」元禄9年(1696)初代・伊藤宗看、作
…中将棋の詰め物。全50問。中象戯圖式の写し。<未所有>
「中象戯初心抄(ちゅうしょうぎしょしんしょう)」元禄10年(1697)
…中将棋の指し方と詰め物38問。武田副会長が過去に解読を行っている。<未所有>
「中将棊指南抄(ちゅうしょうぎしなんしょう)」元禄16年(1703)
…指し方と詰め物30問。「雑藝叢書 第一」の原本。棋譜が十二支と漢数字で表記。
「中将棊作物(ちゅうしょうぎつくりもの)」延享3年(1746)七世名人、三代・伊藤宗看、作
…詰め物。全50問。最終問題はなんと2000手を超える大作。
「中象戯補録集(ちゅうしょうぎほろくしゅう)」安永7年(1778)初版、文化13年(1816)再版
…中将棋史上、唯一の対局譜の記録。6局が記載されており、駒落ち手合い(現在とは異なる)による対局も記録されている。先手後手の棋譜が現在とは逆(初手5五歩)に記録されており、とても珍しい。
岡野氏の「中将棋の記録」には宝永7年(1710)初版とあるが、安永7年の誤り。
「中将棊絹篩(ちゅうしょうぎきぬぶるい)上・下」文政元年(1818)
…指し方と詰め物68問。上巻に指し方と詰め物の解答(十二支表記)、下巻が詰め物の図式。
1問目から38問目までが中象戯初心抄の写し、39問目から68問目までが中将棊指南抄の写しと、2冊の合本再販がこの本となる。
「中将棋詰物(ちゅうしょうぎつめもの)」発行年不明・詰め物20問。<未見>
「中象戯作物百番(ちゅうしょうぎつくりものひゃくばん)」発行年不明<未見>
「中将棋詰物指南(ちゅうしょうぎつめものしなん)」元禄16年(1703)<未所有>
…これも中将棊指南抄の題名を変えた再販本ということが判明。
以上が江戸時代の文献です。
「雑藝叢書 第一(ざつげいそうしょ だいいち)」日本図書センター・刊(復刻版)
…「中将棋指南抄」「象棋六種之圖式」が収録。大正期に日本のあらゆる芸道についての専門書・古文書をまとめて収録した本。第二まであるので閲覧時には注意。
「中将棋の指し方」岡崎史明七段、昭和40年代
…佐藤敬商店が現在も販売している中将棋セットに付録としてついていた説明書。現在はついていないため、廃刊。昭和期に近畿中心に広まっていたルールをまとめた物と見られる。
「中将棋全集(ちゅうしょうぎぜんしゅう)全11巻(12巻とも言われる)」昭和52年(1977)、松田正一
…京都府在住の松田正一氏(故人)が、生前に中将棋を後世に残すための教本として自費出版された。駒落ち手合いの全10巻と、平手1巻の全11巻からなる(一説には12巻もあると言われているが未確認)中将棋の実践譜、解説も詳細に記されている。3部を作られたと言われ、一部は自身に、もう一部は関西将棋会館・将棋博物館に寄贈(現在紛失中で確認出来ず)、もう一部が京都市の京都府立総合資料館に寄贈(確認済み)されている。
「はじめての中将棋」2003年、中将棋倶楽部
…現在一般に入手できる中将棋の専門書。中将棋倶楽部代表の水神涼氏がまとめた。また、佐藤敬商店の中将棋セットに現在付録としてついている。(連盟のルールとは一部異なる点があります。)
「中将棋の記録 (一)」2004年、岡野伸
…古将棋、アジア将棋の研究家である岡野伸氏が中将棋のルールや歴史など、広範囲にわたって解説されている本。現在入手できるものとしては一番詳しい。(購入方法に関してはおしらせコーナーで紹介)
以上が、現在分かっている中将棋に関する専門書です。江戸時代の文献に関しては私もいくつかを所有しておりますが、全てではありません。主に詰め物が多く、解答のない「中将棊作物」や、干支を利用した盤面など、貴重な資料が多いです。また、これらの古文献については、東京の国立図書館に所蔵されているとも聞きますので、ぜひ興味のある方はお調べください。
中将棋以外の古将棋については、ルールに関する子細はほとんど無く、盤面図の紹介と駒の行き方図が記されている程度にすぎません。また、文献によって呼び方が異なる物もありますが、ややこしいためここでは一部を除いて将棋の名前は一般に知られている漢字を用いています。
「象戯種々之圖(しょうぎしゅしゅのず)」嘉吉3年(1443)原本は見つかっていないそうです。
「象戯圖(しょうぎず)」天正19年(1591)水無瀬兼成
…嘉吉3年版の写本と言われている。小象戯・中象戯・大象戯・大大象戯・摩訶大大象戯・大将基(泰将棋)の初期図と駒の働きが記されている。<未所有>
「象棊纂圖部類抄(しょうぎさんずぶるいしょう)」文禄2年(1593)水無瀬兼成
…上記の写本。<未所有>
「諸象戯図式(しょしょうぎずしき)」元禄9年(1696)、元禄7年版も(将棋Tに記載)
…小象戯・和象戯・中象戯・天竺大将棊・太象戯(大将棋)・太太象戯(大大将棋)・摩訶太太象戯(摩訶大大将棋)・大象戯(泰将棋)が記載。<未所有>
なお、この後六種之圖式で、泰将棋の字が改まったことについての記述が見られます。現・大将棋=太象戯(だいしょうぎ)と現・泰将棋=大象戯(おおしょうぎ)と言うように区別されていたのですが、あまりに混同しやすいために大象戯の大を泰とあらため、泰将棋(たいしょうぎ)と呼ぶようになりました。
なお、これでも勘違いしやすいものですから泰将棋のことを特別に、無上泰将棋と呼んで区別したものもあります。
「象戯図式(しょうぎずしき)」発行年不明
…諸象戯図式の筆写本。前述のほかに図は記されていないが、唐象戯、七国象戯、広象戯、太局象戯(大局将棋)の紹介が記されている。現在「将棋T」に収録されている。
「古今象棋図彙(ここんしょうぎずい)」元禄10年(1697)、初代・伊藤宗看<未所有>
「象棋六種之圖式(しょうぎろくしゅのずしき)」文政4年(1821)
…小象棋・中象棋・大象棋・大大象棋・摩訶大大象棋・泰象棋の6種類が収録されている。現在「雑藝叢書」に収録されている。
以上が江戸時代の文献です。
「雑藝叢書 第一」…「象棋六種之圖式」が収録されている。
「将棋T」昭和52年(1977)法政大学出版局・増川宏一
…現在も図書館で比較的容易に閲覧可能です。古将棋についての解説や、前述の「象戯図式」も資料として収録されています。
「世界の将棋」平成12年(2000)改訂版、将棋天国社・梅林勲、岡野伸、共著
…現在小象棋から大局将棋までを全て見ることが出来る唯一の本です。日本の将棋だけでなく、世界中の将棋ゲームが紹介されています。一般の書店ではほとんど見ることが出来ませんが、関東・関西の将棋会館などで販売されています。