中将棋のルール(初心者向け・基本的なルール)

 

1.「中将棋」の概要(ちゅうしょうぎのがいよう)

 

 中将棋は、たてよこ12マス(格とも言います)の盤面で、各陣がそれぞれ46枚の駒を用いて勝負する日本の将棋ゲームです。(12×12=144マス、駒92枚)

 現代の日本将棋(本将棋)とは異なり、中将棋では取った駒を持ち駒として再利用することは出来ません。全て取り捨てで行います。これは世界中の将棋ゲームで共通のことであり、唯一本将棋だけが再利用の出来るルールの下で行われている異色のゲームといえます。

 駒の種類は初期配置の時点で21種類、全て成り駒が異なり、また成り駒としてのみ登場する駒も8種類あり、全てを併せると29種類の駒が乱れ飛びます。

 

2.勝利規定(しょうりきてい・ゲームの勝敗の決め方について)

 一.敵の王将(玉将)を詰める(詰めるというのは、王将が王手をかけられてしまい、なおかつ他に逃げる場所が無くなってしまった状態のことを言います。)、あるいは自軍の駒で敵軍の王を倒した場合(これを「突き落とし」と言います。)に勝ちとなります。<敵将を詰めることが目的の本将棋とは異なります>

 二.ただし、敵軍に太子がいる場合は、これも倒さなくては勝ちにはなりません。(太子は醉象が成った状態の駒のことです。太子は王将と同じ働きをし、どちらかが倒されてもゲームは終了しなくなります。)

 三.両軍がともに駒を消耗しあい、駒枯れの状態になった場合、玉将2枚と成金1枚だけが盤面に残ったときは成金のある側が勝ちとなります。

 四.もし、駒枯れでともに相手を詰めることが出来ないという展開になった場合は、両者の合意によって引き分けと決めます(これを「持将棋(じしょうぎ)」と言います)。再対局を行なう場合、先手後手を入れ替えての再対局となります。

3.駒について

 中将棋の駒は全部で29種類あり、それぞれをその駒の性能にあわせてグループ分け(格付け)されています。(赤文字は成り駒専用、青文字は不成・成り共に登場する駒です。)

・「」の格…歩兵.仲人.

・「小駒」の格…猛豹.銅将.銀将.金将.盲虎.醉象.麒麟.太子(玉将)

・「走り駒」…香車.白駒.反車.鯨鯢竪行飛牛横行奔猪
       飛鹿飛車龍王角行龍馬.鳳凰.

・「大走り駒」…奔王飛鷲角鷹

・「獅子」…獅子

・玉将(別格、ただし太子が共にいる場合はどちらか一方が小駒、太子のみが残っている場合は太子を別格として扱います)

一.駒を成らす場合、敵陣の4段目(歩兵のいる列)まで進んだ場合にその駒を成ることが出来ます。

二.もし不成(ならず)で進んだ場合について、

@歩兵が不成で進入した場合、最後段(敵陣の一番奥の段)まで進んだときに再び成る機会を与えられる。

Aそれ以外の駒が不成で進入した場合は、敵陣から退き、再度敵陣に進入した場合に成る機会を与えられる。

Bいずれの駒も、敵駒を取った場合はその時点(敵陣の中、または敵陣から退く形で敵駒を取った場合)で成る機会を与えられる。

C歩兵・香車が敵陣の最後段まで進んでなおかつ不成の場合は、その場で「死に駒」として扱う。(今の小将棋だと禁じ手ですが、中将棋では許されています。)

4.禁じ手・千日手などの規則

一.お手つきをした駒は、必ず指し進めなくてはいけません。お手つきとは、動かそうという意思は無かったがうっかり駒を触って持ち上げてしまった時の事をさします。これが自分の手番であった場合はその手番で、相手方の手番であった場合は直後の自分の手番でお手つきした駒を強制的に動かします。

 ただし、お手つきをした駒が配置上身動きの出来ない駒であった場合は例外的にお手つきを許すものとします。

二.千日手は、仕掛けた側が別の手を指さなくてはいけません。(本将棋では引き分けとなりますが、中将棋では指し直すことと定められています。ただし、これはその時代によって検討が重ねられていくべき部分でもあり、今後どのように変更されるかは分かりません)

三.駒がマス目からはみ出してしまった場合もお手つきとして扱い、必ず次の手でその駒を動かさなくてはいけないというルールもあったそうです。ただし、本当に使われるかは対局者同士の取り決めによるものが大きいです。
 

5.獅子の特殊ルールについて

 獅子は、中将棋の花形です。これが盤上からあっさりと消えてしまうと、非常にそのあとの展開はつまらなくなりますので特殊な規則が作られることになったと思われます。

主に獅子が獅子を取り合うようなケースにおいて作られたものと考えられます。では紹介します。

一.獅子同士が隣接している場合は、無条件で相手の獅子を獅子で取ることが出来る

二.獅子の足>獅子同士が1マス間を空けて隣り合っている場合(お互い獅子の利きに入っている状態です)で、獅子に足のある場合(足とはつなぎ駒、つまり自分の獅子を守っている駒です)、その獅子を取ることが出来ません。足がない場合は取ることが出来ます。

三.ウラ足・かげ足>もし、自分の獅子が相手の獅子に攻められた場合、その相手の獅子をまたぐ形で自分の獅子に走り駒の利きをおいた場合、ウラ足といってこれも取ることが出来ません。言い換えれば,仮に獅子が取られた局面を想定した場合に取り返えされる位置関係にある配置にあれば,足の一種とみなします。

四.先獅子>敵の獅子に、自分の獅子以外の駒が当たった場合は、無条件で取ることが出来ます。この場合、自分の獅子に足がついている場合は先獅子の特約が発動し、敵側は直後の一手で獅子を取り返すことが出来なくなります。これを先獅子の得といいます。麒麟が獅子を取りながら成った場合も先獅子が成立します。

五.獅子の付け食い>獅子と獅子の間に敵の駒がある場合、この駒を取った上で相手の獅子も一緒に取ることが出来ます。これを付け食いといいます。付け食いのあとは、すぐに敵のつなぎの駒で取り返すことが許されます。これを獅子を討つといいます。付け食いは,獅子に足が付いている場合に,取れる例外です。ただし、歩兵と仲人は付け食いの対象とはなりません。

…では、局面で具体的に紹介します。

二.獅子の足

 この状態、どちらの獅子にも角行・飛車それぞれがつなぎ駒として見方の獅子を守っています。こういう状態のときは、獅子で獅子を取ることは出来ません。つなぎの駒はどんな駒でもかまいません。

 注意していただきたいのは、獅子の間に1マス間が空いている状態であるということです。つまり、駒の解説編で獅子の駒図に基づくと、Aの行動範囲に敵の獅子がいる状態を指しています。隣接した状態、つまり@の範囲内に獅子がきた場合は無条件でその獅子を倒すことが出来るのです。


三.ウラ足・かげ足

 ▲7七角行がいなかった場合を想定してください。その場合、1一▲獅子は足が無いので次の後手番で▽獅子にただ食いされてしまいます。
 そんな場合に、相手の▽獅子をはさんで▲7七角行と指せば、これも足と認められて▽獅子は取ることが出来なくなります。
これをウラ足またはかげ足といいます。この足はどうしても走り駒でしか出来ませんので、規定にも走り駒と明記されているゆえんです。

 


四.先獅子の特約

 相手の獅子を獅子以外の駒で取ることは、足のあるないに関係なくいつでも可能です。この図ではどちらの獅子にも相手の駒が当たっていますね。このような場合で、先に相手の獅子を取った側は、自分の獅子に足が利いていることを条件に先獅子の特約が発動し、相手側は直後の一手で獅子を取り返すことが出来なくなります。

 


五.付け食い

 これは二.の駒図に近いものですが、ここでは獅子と獅子の間に銀将という駒がいます。このような場合、▲獅子は2二・1一と指して銀将・獅子の2枚取りが許されます。このような場合に、間にいた駒のことを付け食いの駒と呼びます。
 <ただし、歩兵・仲人は付け食いの対象にはなりません。>

 付け食いで獅子を取った場合は、1五の飛車で直ちに討ち返すことが出来ます。これを獅子を討つと言います。

 また、より複雑な図面は別途紹介しています。補足ルール編をご覧下さい。

次に、持将棋についても具体的に考察しましょう。

 持将棋とは、ともに駒枯れで王手がかけられない状態をさします。

 右の図の場合、先手が「▲1四酔象成る」で太子となります。その次後手は「▽2五獅子」と指し、さらに「▲同太子」で盤面上にはともに王(太子)のみとなってしまいました。この場合、ともに王手がかけられないので持将棋が成立し、引き分けとなります。

 なお、2五獅子と指した時点でその瞬間、駒枯れの勝利規定が成立するように思えますが、すぐに太子が獅子を取り返せるのでこの場合は持将棋となります。


 これは後手側の負けのケースです。

 一見すると勝負がつかないように思えますが、先手には獅子の「じっと」が出来るのに対して、後手は動かさざるを得ません。3列目に獅子が近づいたらその時点で間駒利かずの王手となり、負けです。だから盲虎が動いた時点で負けが決まります。

(1二の▽盲虎ですが、動ける場所は2一、あるいは2三しかありません。どちらにせよ、▲2三獅子で合い駒きかずの詰めです。 また、2二の▽盲虎も2一か1三しか動けませんので、1三なら同玉将、からの獅子寄せで勝ちです。)。

もちろん、先手がバカな手をして盲虎と相討ちにでもなってしまえば勝敗は変わりますが、そんなことにならない限りは先手の勝ちです。