作成2000.3.6.・更新2005.5.10.
右の図が、現代将棋の前身である小将棋です。
盤の大きさや、駒の種類など、ほぼ現代の将棋と同じ物となっており、この将棋を再現するのも比較的容易であると思います。
なお、現在日本に存在する将棋のうち、ルールが現存しているものは現代将棋と中将棋、そして第2次世界大戦期においてのみ流行ったとされている軍人将棋の3種類にとどまっております。(小将棋ですが、私の知る範囲では詳細なルールは伝わっておりません)ので、ここでは、現代将棋のルールをベースとした、「多分こうだろう」と思われる遊び方を紹介したいと思いますので、ご了承くださいませ。
もう一つ、小将棋にはそれを紹介する古典資料がおおきく2種類あり、日本伝来当初の小将棋(当時は単に将棋と呼ばれていました)とはかなり盤・駒ともに様相の異なるものでありましたことをあらかじめ紹介させていただきます。
(そちらについては、将棋の歴史にて紹介しています。)
まず、駒の動き方から解説します。(といっても、現代将棋と何ら変わるところはないのですが)
成る前 |
歩兵@ |
香車A |
桂馬B |
銀将C |
金将D |
角行E |
飛車G |
酔象I |
王将J |
成った後 |
と金 |
金 |
金 |
金 |
なし |
龍馬F |
龍王H |
太子J |
なし |
以上となっています。中将棋を先に見ていただいた方ならば、酔象についても理解いただいていると思います。
そして、角行と飛車以外は成ると金将であるということも現代将棋を基本とするためにそういたしました。(実際に成り駒が多種多様であるのは、中将棋以上の大型将棋に限られるようです。)
なので、将棋をご存知の方はあまり説明する必要もないと思われますが、知らない方のためにもここでは出来る限りの解説をすることと致します。
@ 歩兵(ほへい・ふ・ふひょう)
毎度おなじみの雑兵、歩兵くんです。前に1マス進みます。成ると「金将」、と金とも言われます。
現代将棋では持ち駒として、終盤戦の詰め、あい駒として活躍の機会がありますが、小将棋では取り捨てルール(後述)のため、ほぼ捨て駒です。
A 香車(きょうしゃ・やり)
こちらも小将棋ではつぶし合いの捨て駒。 前に走ります(もちろん駒を飛び越すことは出来ません)。
成ると「金将」。 盤面両サイドをいつ潰す事とするのか、シビアな戦略が要求されます。
B 桂馬(けいま)
中将棋では存在しなかった桂馬も小将棋では貴重な飛び駒です。
変則ナナメ前2方に飛び越えて進みます。現代将棋・小将棋で唯一、駒を飛び越すことのできる動きをします(図の通りです)。成るとこちらも「金将」です。
チェスでも馬の駒が桂馬と同じ動きをしますが、あちらは変則ナナメ八方向なのに、日本の馬は前方のみです。
C 銀将(ぎんしょう)
前三方・ナナメ後ろと、五方向に1マス進みます。成ると「金将」。
銀がナナメ後ろに対して、金は後ろのみなので、以外と成らない方がいいことも起こります。
D 金将(きんしょう)
銀将以下の全ての駒が成ると、金将となります。ナナメ後ろ以外の六方向に1マス進みます。
中将棋では脇役でしたこいつらも、小将棋では大切な戦力です。地味ではありますが、力強く敵陣を攻め立てましょう。
E 角行(かくぎょう)
小将棋・現代将棋での貴重な走り駒です。ナナメ四方に走ります。
成ると「龍馬」、金将ではありません。
本当に貴重な戦力です。また、取り捨ての小将棋ではなくなったら最後、です。慎重にかつ大胆な攻めが要求されます。
F 龍馬(りゅうめ・りゅうま)
角行が成るとこちらになります。ナナメ四方走りに加えて、縦横四方に1マス進みます。
こうなるとますます殺されたくなくなりますね。
G 飛車(ひしゃ)
もう一つの走り駒、縦横に走ります。成ると「龍王」。
角が前線に突撃しやすいのに対して、飛車は前に陣取る歩兵のためになかなか思うようにいきません。また、小将棋では陣のど真ん中に酔象がいるために現代将棋での戦略・定石の一部が使えません。そこをどう活かすか、腕の見せ所です。
H 龍王(りゅうおう)
飛車の成り駒です。縦横の走りに加え、ナナメ四方に1マス進みます。
やはり、攻め方は慎重にならざるを得ません。うかつに敵に取られますとそれだけで戦局が変わりかねないからです。中将棋と違って駒数は限られたものですし、非常にシビアです。
I 酔象(すいぞう)
後ろ以外の七方向に1マス進みます。成れば「太子」、王将の伏兵です。
ここが現代将棋との唯一の違いといってもいいでしょう。王将2枚にするか、それとも金銀将とともに最強の守りを築きあげるか、プレイヤー次第です。
J 太子(たいし)・王将(おうしょう)
全軍の将です。八方向に1マス動く事が出来ます。
太子が存在する場合は、王・太子ともに倒さなければなりませんから、なんとしても酔象の進軍は食い止めねばなりません。
以上、12種類の駒(太子含む)を紹介しました。
では、次に小将棋の規則です。
1.盤面縦9マス、横9マス、全81マスで行い、駒数42枚、取った駒は使わない。
…現代将棋を除く、全ての将棋は駒の再利用をしません。その理由は将棋のルーツである、インドのチャトランガ以来、全ての将棋ゲームは『駒を取った=敵を殺した』とみなすからではと思います。
また、こういう基本ルールがあるからこそ、「酔象・太子」という、王将同格の駒を使うゲームが誕生できたともいえます。もし、現代の再利用(持ち駒)ルールで酔象・太子がいたら、持ち駒としての酔象をいきなり敵陣に指し、次の手で太子に成る、ということが出来、勝負をつけられなくなるばかりか、片方のプレイヤーに王将・太子・太子という、王3枚状態が発生する事もありえるため、ゲーム性に欠けるものとなることでしょう。
2.勝利条件は、
・敵の王将(太子がある場合はそれも共に)を取る。
・盤面駒枯れとなり、王2枚、金1枚となった場合。
以上です。ともに中将棋と同様のルールです。敵が王手に気づかない場合、王将を取ってもかまいません。
そして、駒枯れの場合は、金(以外の駒も含む)が残っている側の形勢勝ちとします。
持将棋も中将棋同様です。詳しい説明はそちらで。
3.駒の成りかたについて。
・敵陣3段目(歩兵の初期配置の段)から成る事が出来る。また、不成りの場合も次の手で成る事を許されるものとする。
・歩兵、香車、桂馬については一番奥の段まで前進した場合、強制的に成る事とする。
以上とします。こちらは現代将棋と同様のルールとしました。なぜなら、中将棋と異なり盤面が小さい事、現代将棋に出来るだけ近い指し方が出来る事を目指すためです。
二つ目の規定は、補足と考えてください。これらの駒は後ろに動く事が出来ないため、敵陣の奥まで進むと身動きが取れなくなるのでその救済措置です。
以上で小将棋のルールを簡単にですが、紹介いたしました。私の知識が至らないため、千日手への規制をどうするのかについては判断いたしかねる状態です。
なにぶん、小将棋は現代将棋に酔象が加わっただけの形です。そして、駒は取り捨てのルールですから、極めて単純な勝負が見込まれます。現代にその軌跡は伝わっていませんが、現代将棋が作られた背景には、必勝手順がとある名人によって編み出されたからだとも言われます。もしかすると小将棋を楽しむうちに、その手順が発見できるかもしれません。
では、小将棋を実際に行うに当たって、必要とするものは、現代将棋の盤・駒と、自作(あるいは中将棋の)酔象を用意するだけです。酔象をどう作るか、それだけですので、是非興味のある方は作ってみるなり、中将棋を探して転用するなり、してみてくださいませ。